【短編小説】しまったままの肩たたき券|ささざめ

 父が死んだ。母から連絡を受けた俺は、大きく息を吐き、帰省の準備を始めた。  厳格な父だった。仕事人間で、いつも眉間にしわを寄せていた。そんな父のことが苦手だった俺には、親子らしい会話をしたような記憶はなかった。大学への進学のため実家を出て以来、最期まで顔を合わせることはなかった。  死因はがん。発…