水在月|篠木マリ

まだ梅雨が明けきらない7月のはじめ、ヒロアキは母親と奈良の祖父母宅に松山旅行のお土産を届けに行った。 「どうだった、松山は?」 「それがねえ、お義父さん、この子、一瞬だけど行方不明になったんですよ。道後温泉で『神の湯』にはいったときにね。マサキさんが男湯に連れていったんですけど、この子、すぐ『のぼせ…