デイヴィッド・グレッグ『あの出来事』のためのノート3|谷岡健彦

 刊行されている『あの出来事』の戯曲には、初演時の演出家ラミン・グレイが記した覚書が付されている。わずか1ページの短い文章だが、グレイが、演劇は舞台と客席との間の相互作用から生まれる芸術だと、わざわざ確認するところから稿を起こしているのが興味深い。と言うのも、この劇では舞台上の演者のみならず、観客…