【連作短歌】蟹のいる生活|瑞木理央 〜水の領域(短歌と詩)〜

青痣が消えない点滴針の痕 終末前夜をどこまでも行く 血のにじむ絆創膏を剥がすとき無音の白い空間が来る 肝臓に棲む黒蟹の消息をきくたびに潮騒がうまれる 遺伝子の捩(よじ)れた蟹にぴったりと寄り添うような波をください 両肺に水玉模様の火を宿し浅瀬で泳ぐように息して 黒蝶ひらり万緑をゆく病む肺のようにひ…