短編小説『ウサギちゃんは残酷な月』|YuWd (和田唯我)
「字が汚いねと君に言われて、僕は救われた気がしたんだ」 ── 僕の無意識は、この経験をテムズ川の深いところから、音も立てずに掬い上げてきた。数秒経って、僕の意識がテムズ川から乾いた土色の机へと戻ったとき、僕は思わず立ち上がって「そうだ、彼女に手紙を書こう」と思った。どこか見えないところへ…