ある男|序|平野啓一郎|平野啓一郎
この物語の主人公は、私がここしばらく、親しみを込めて「城戸さん」と呼んできた人物である。苗字に「さん」をつけただけなので、親しみも何も、一般的な呼び方だが、私の引っかかりは、すぐに理解してもらえると思う 城戸さんに会ったのは、とある書店で催されたイヴェントの帰りだった。 …