一滴の水彩|Mist

 二十五階の窓からは雨のやまない町が見えた。町は灰色にちぢこまっていた。 「すごい雨だね。」   ジュリーが濡れた髪をくしゃくしゃに拭きながら、ちょうどバスルームから戻ってきた。 「ええ。」  ヒロコは目も合わさずに窓から離れた。  サイフォンを傾けて一杯のコーヒーを飲み、それからふたりは十六階へ降りた…