短編小説【記憶】|カメ

 沙織は、玄関が閉じたのを確認すると、ハイヒールを脱ぎ捨て、ベッドにそのまま倒れこんだ。  バッグに入っているスマホは、そんな沙織を怒ったようにブーブー震えている。 ―今日ぐらい、いいじゃんか  沙織は恨めし気にバッグを見つめながら口をすぼめる。  今日は沙織にとって最悪の一日だった。仕事はどうしても手…