扉|水流苑まち(つるぞの・まち)

 高校の裏門をくぐって、住宅の立ち並ぶ角を右に一回、左に一回曲がる。  待ち合わせ場所の駐車場の前には、すでに知樹(ともき)くんの姿があった。彼は緑色に塗られたフェンスに背中を預け、右手で文庫本を開いている。その手に白い包帯が巻かれているのを見て、心臓が縮こまるような感覚をおぼえた。  今日、昼休憩…