古本夜話1089 ちぬの浦浪六『深見笠』と春陽堂

前回の「狂言百種」の他に、同じく春陽堂のちぬの浦浪六の『深見笠』があり、これも明治二十七年二月初版、九月第三版の一冊で、やはり菊判和綴じ、一六七ページの和本仕立てであった。ちぬの浦浪六とは村上浪六の初期のペンネームで、故郷の堺にちなんでつけたという。 浪六は慶応元年泉州に生まれ、幼くして父を失い、母…