都筑道夫「べらぼう村正」(文春文庫) 「神変武甲伝奇」のスピンオフ。社会からはじき出された浪人が同じ境遇の女たちのアソシエーションの用心棒になる。

「神変武甲伝奇」の左文字小弥太は、ニヒルであっても気のいい浪人ものであったが、ここではひどく鬱屈している。要するに、旗本の次男坊、三男坊に生まれたために家禄を継げず、30代なかばで隠居させられてしまったから。ようするに武士社会との縁を切らされたわけだ。一方、小弥太の出会うお関は夫を亡くしたために、や…