大岡昇平「俘虜記」(新潮文庫)-1

1948年に発表した連作小説。断続的に発表されて、のちに一冊にまとめられた。 戦前に帝国大学仏文科を卒業した男がいる。翻訳の腕を買われていくつかの会社で棒給生活者をしながら、スタンダールの研究をしていた。状況が一変するのは、1944年3月に36歳の高齢で招集されたこと。3か月の訓練ののち、マニラに送られる。幸い…