フョードル・ドストエフスキー「賭博者」(河出書房) 賭博に感じる恐怖とふるえ、全生命が凝縮している一瞬、忘我の法悦。自己破壊・自己破滅を望むマゾヒスティックな気分。

「罪と罰」連載中にどうしても長編を書かねばならなくなり、にっちもさっちもいかないので、速記ができる女性を雇い(のちの妻)、27日間で口述筆記した。すでに構想ができていたのと、舞台がなじみの賭博場であったので取材が必要なかったので、驚異的なスピードで完成したのだろう。 25歳の「わたし」はドイツのルーレテ…