アガサ・クリスティ「復讐の女神」(ハヤカワ文庫) マープルはお茶目で世話好きでおしゃべりなおばあちゃんから神話的な「復讐」の実現を確認する形而上的な立場に立っている。

80歳になったミス・マープル(著者クリスティも同じ年齢)は、リューマチで手がこわばり、きびきびと動くことはかなわない。なにより友人や知り合いはことごとく世を去り、おしゃべりを楽しむ相手はいない。セント・メアリー・ミードで村人を観察する喜びは失われている。大江健三郎「美しいアナベル・リイ」(新潮文庫) …