野阿梓「凶天使」(ハヤカワ文庫) 「ハムレット」の大胆な読み直しがセラフィーによるジラフ追跡劇につながり、物語の壁が壊される。

小説の背景にあるのは、西洋の神秘主義。なので、上帝、天使、女神、竜など霊界の存在が説明抜きで現われ、彼らは地上界と行き来できる。名前はキリスト教由来のものもあれば、イスラム由来、ゲルマンやケルトの神話由来のもいたり。無節操ともいえるが、西洋神秘主義の伝統から切り離されているアジアの住民にはいずれも…