宮下奈都「羊と鋼の森」(文春文庫) 本書が終わったところから主人公の冒険や苦労の克服が始まるはずなのに中断してしまった教養小説。

日本文学はいつからモラトリアム時代の青少年を主人公にするようになったのだろう。この頃の傾向か?(あ、「浮雲」や「三四郎」のころからそうか。) 「僕」は山里くらし。中学生の時にピアノ調律の仕事を見学する機会があった。調律の仕事がしたいという希望を持ち、弟子入りを志願するが、まず学校に行けと諭される。卒…