夏目漱石「坊っちゃん」(青空文庫)-2 「坊ちゃん」は共同体になじめないものが排除される物語。西洋の知識と美意識とマナーを身に着けると、30歳の「おれ」は「余」と名のって海の見える温泉宿に行くこともあるだろう

奇妙な小説だ。というのは、語り手の「おれ」23歳の観察力が不足していて、事態がさっぱりつかめないからだ。ことに、四国の中学に赴任して以降。とりたてて授業がうまいわけでも生徒に支持されているわけでもないのに、ひと月もたたないうちに校長は増給を持ち出す。いっぽうで、古賀(うらなり)は失策があるわけでは…