『雨の日に香を薫く』薄田泣菫 2

香を焚くのは、どんな場合にもいいものですが、とりわけ梅雨の雨のなかに香を聞くほど心の落ちつくものはありません。私は自分一人の好みから、この頃は白檀を使ひますが、青葉に雨の鳴る音を聞きながら、じつと目をとぢて、部屋一ぱいに漂ふ忍びやかなその香を聞いてゐると、魂は肉体を離れて、見も知らぬ法苑林の小路に…