『春にして君を離れ』アガサ・クリスティー|愛に満ちた理想の家族という幻影

「度しがたい道徳家なんだなあ、きみは」 ――アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』 人間は自分が見たいように世界を見るし、自分が見たいように他者を見る。自分に似たところを見つけたり、自分がなりたい姿を見出せば、他者を好きになるし、自分にあると認めたくないものを他者のうちに見れば、嫌悪して遠ざける。 そ…