春を待つ

畳の目をつるつると滑るように小さなクモが明るい陽射しの方へ歩いていく。その庭先で雪冠の椿が、ぽたり、と一輪落ちた。雪がやっと止んで春が近づき、なのにまた雪が降りと繰り返し、もうさすがにいよいよ、と思った矢先にまた降った。この雪が最後になればいいと、晴れた午後に積もる白へ眩しく思った。まるでぼくのこ…