小谷野敦著『歌舞伎に女優がいた時代』(中公新書ラクレ)を読む(その2)

第三章「女團洲、市川九女八」は、この本の柱である。幕末期には大名の奥で芝居と舞踊を披露した御狂言師(お狂言師)の女性たちは、維新に伴って、その職を失いもともとの町の踊りの師匠に専念するか、下っ端で働いていた者は藝者になるか、売春のほうに転落するかしたりであったが、新時代の「女役者」として舞台に立つ…