森見登美彦『夜行』  京都を抜けるとそこは京都であった

デビューから10年以上が経過した森見登美彦の最新作は『夜行』。『きつねのはなし』にも通じる、じっとりと湿った怪談風味のファンタジーだ。 僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。 私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。 十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。 …