柳田邦男『犠牲』を読みながら考えたこと

ひとは自分が生まれた季節を好きになるというが、その根拠とはなんなのだろう。私は真夏の生まれだが、夏を好きになる気配は一向に訪れないまま、二十と余年を生きている。 尤も、この酷暑を好くとあらば、それは相当に肝の据わった人物ではなかろうか。 日本では、夏は死を想う季節である。夏にはお盆があるし、第二次大…