最愛の桐壺更衣を失った失意の帝【源氏物語 桐壺8】第一親王が東宮におなりになる。桐壺更衣の母もなくなり、若宮は宮中におられることが多くなった。

月も落ちてしまった。 『雲の上も 涙にくるる 秋の月 いかですむらん 浅茅生《あさぢふ》の宿』 命婦が御報告した故人の家のことを なお 帝は想像あそばしながら起きておいでになった。 右近衛府《うこんえふ》の士官が 宿直者の名を披露するのをもってすれば 午前二時になったのであろう。 人目をおはばかりになって御寝…