不気味な院に赴いた源氏【源氏物語 43 第4帖 夕顔9】夕顔は不安がる。二人で朝を迎えて 荒れた庭を眺める。怯える女君を愛おしく思う

呼び出した院の預かり役の出て来るまで留めてある車から、 忍ぶ草の生い茂った門の廂《ひさし》が見上げられた。 たくさんにある大木が暗さを作っているのである。 霧も深く降っていて空気の湿っぽいのに 車の簾《すだれ》を上げさせてあったから源氏の袖も そのうちべったりと濡れてしまった。 「私にははじめての経験だ…