深く愛する故の妄執【源氏物語134 第九帖 葵7】御息所の前を知らぬまま通り過ぎ、左大臣家に敬意を表す源氏。屈辱に涙を流す御息所

源氏は御息所の来ていることなどは 少しも気がつかないのであるから、 振り返ってみるはずもない。 気の毒な御息所である。 前から評判のあったとおりに、 風流を尽くした物見車に たくさんの女の乗り込んでいる中には、 素知らぬ顔は作りながらも 源氏の好奇心を惹《ひ》くのもあった。 微笑《ほほえみ》を見せて行くあた…