【源氏物語172 第九帖 葵45】涙を流し悲しむ左大臣を力づける源氏

しばらくして源氏の居間へ大臣が出て来た。 非常に悲しんで、 袖を涙の流れる顔に当てたままである。 それを見る女房たちも悲しかった。 人生の悲哀の中に包まれて泣く源氏の姿は、 そんな時も艶《えん》であった。 大臣はやっとものを言い出した。 「年を取りますと、 何でもないことにもよく涙が出るものですが、 ああし…