【源氏物語173 第九帖 葵 46】若君がおられることもあり 源氏との縁は続くものの 左大臣は哀しく淋しく思って泣く。

「それではもうお出かけなさいませ。 時雨《しぐれ》があとからあとから 追っかけて来るようですから、 せめて暮れないうちにおいでになるがよい」 と大臣は勧めた。 源氏が座敷の中を見まわすと 几帳《きちょう》の後ろとか、 襖子《からかみ》の向こうとか、 ずっと見える所に女房の三十人ほどが 幾つものかたまりを作っ…