【源氏物語182 第九帖 葵55】亥の子餅を持ってきた惟光に 結婚のための餅を命ずる。惟光は全てを察し 手ずから餅を調製する

その晩は亥《い》の子の餠《もち》を食べる日であった。 不幸のあったあとの源氏に遠慮をして、たいそうにはせず、 西の対へだけ美しい檜破子詰《ひわりごづ》めの物を いろいろに作って持って来てあった。 それらを見た源氏が、南側の座敷へ来て、 そこへ惟光《これみつ》を呼んで命じた。 「餠をね、今晩のようにたいそ…