【源氏物語217 第十帖 賢木29】源氏は藤壺の宮の御髪とお召し物を手にとらえた。宮は迫る源氏を強く避けておいでになる。

驚きと恐れに 宮は前へひれ伏しておしまいになったのである。 せめて見返ってもいただけないのかと、 源氏は飽き足らずも思い、 恨めしくも思って、 お裾《すそ》を手に持って引き寄せようとした。 宮は上着を源氏の手にとめて、 御自身は外のほうへお退《の》きになろうとしたが、 宮のお髪《ぐし》はお召し物とともに男…