【源氏物語264 第11帖 花散里4】橘の木が懐かしい香を送る。女御は柔らかい気分の受け取れる上品な人であった。昔の宮廷の話をし 源氏は色々と思い出し泣いた。

巡る思い出 written by 蒲鉾さちこ 目的にして行った家は、 何事も想像していたとおりで、 人少なで、寂しくて、身にしむ思いのする家だった。 最初に女御の居間のほうへ訪ねて行って、 話しているうちに夜がふけた。 二十日月が上って、 大きい木の多い庭がいっそう暗い蔭《かげ》がちになって、 軒に近い橘《たちばな》…