【源氏物語277 第12帖 須磨11】これまで門前に多かった馬や車はもとより影もないのである。人生とはこんなに寂しいものであったのだと源氏は思った。

忘れられた場所 written by ハシマミ 源氏が二条の院へ帰って見ると、 ここでも女房は宵からずっと歎《なげ》き明かしたふうで、 所々にかたまって世の成り行きを悲しんでいた。 家職の詰め所を見ると、 親しい侍臣は源氏について行くはずで、その用意と、 家族たちとの別れを惜しむために各自が 家のほうへ行っていてだれ…