【源氏物語289 第12帖 須磨23】藤壺の宮の前で、初恋人への怨恨《えんこん》、父性愛、別離の悲しみが一つになって泣く源氏の姿はあくまでも優雅であった。

「こういたしました意外な罪に問われますことになりましても、 私は良心に思い合わされることが一つございまして 空恐ろしく存じます。 私はどうなりましても東宮が御無事に即位あそばせば 私は満足いたします」 とだけ言った。 それは真実の告白であった。 宮も皆わかっておいでになることであったから 源氏のこの言葉で…