【源氏物語291 第12帖 須磨25】院の御陵で、一心に源氏が拝んでいる時に、昔のままのお姿が幻に見えた。寒けがするほどはっきりと見えた幻であった。

父帝の御陵に来て立った源氏は、 昔が今になったように思われて、 御在世中のことが目の前に見える気がするのであったが、 しかし尊い君王も過去の方になっておしまいになっては、 最愛の御子の前へも姿を お出しになることができないのは悲しいことである。 いろいろのことを源氏は泣く泣く訴えたが、 何のお答えも承るこ…