【源氏物語296 第12帖 須磨30】「生ける世の 別れを知らで 契りつつ命を人に限りけるかな はかないことだった」とだけ言った。悲痛な心の底は見せまいとしているのであった

当日は終日夫人と語り合っていて、 そのころの例のとおりに 早暁に源氏は出かけて行くのであった。 狩衣《かりぎぬ》などを着て、簡単な旅装をしていた。 「月が出てきたようだ。 もう少し端のほうへ出て来て、 見送ってだけでもください。 あなたに話すことがたくさん積もったと 毎日毎日思わなければならないでしょうよ…