【源氏物語299 第12帖 須磨33】旅住まいがようやく整った形式を備えるようになったころは、もう五月雨の季節になっていて、源氏は京の事がしきりに思い出された。

きわめて短時日のうちにその家もおもしろい上品な山荘になった。 水の流れを深くさせたり、 木を植えさせたりして落ち着いてみればみるほど夢の気がした。 摂津守《せっつのかみ》も 以前から源氏に隷属していた男であったから、 公然ではないが好意を寄せていた。 そんなことで、 準配所であるべき家も人出入りは多いので…