【源氏物語314 第12帖 須磨48】源氏が「釈迦牟尼仏弟子《しゃかむにぶつでし》」と名のって経文をそらよみしている声もきわめて優雅に聞こえた。

美しい源氏と暮らしていることを無上の幸福に思って、 四、五人はいつも離れずに付き添っていた。 庭の秋草の花のいろいろに咲き乱れた夕方に、 海の見える廊のほうへ出てながめている源氏の美しさは、 あたりの物が皆 素描《あらがき》の画《え》のような寂しい物であるだけ いっそう目に立って、 この世界のものとは思え…