【源氏物語320 第12帖 須磨54】京では 光源氏のない寂寥を多く感じた。東宮は常に源氏を恋しく思召して、人の見ぬ時には泣いておいでになる。

京では月日のたつにしたがって 光源氏のない寂寥《せきりょう》を多く感じた。 陛下もそのお一人であった。 まして東宮は常に源氏を恋しく思召《おぼしめ》して、 人の見ぬ時には泣いておいでになるのを、 乳母《めのと》たちは哀れに拝見していた。 王命婦《おうみょうぶ》はその中でもことに 複雑な御同情をしているので…