【源氏物語322 第12帖 須磨56】紫の上の美しい容姿に、誠実な性格に、暖かい思いやりのある人扱いに敬服して暇乞いする者はいない。源氏は紫の上と離れているのが堪え難い。

二条の院の姫君は時がたてばたつほど、 悲しむ度も深くなっていった。 東の対にいた女房もこちらへ移された初めは、 自尊心の多い彼女たちであるから、たいしたこともなくて、 ただ源氏が特別に心を惹かれているだけの女性であろうと 女王を考えていたが、 馴《な》れてきて夫人のなつかしく美しい容姿に、 誠実な性格に、…