【源氏物語323 第12帖 須磨57】灰色の空をながめながら源氏は琴を弾いていた。良清に歌を歌わせて、惟光には笛の役を命じた。源氏の琴の音に二人は涙を流していた。

近所で時々煙の立つのを、 これが海人《あま》の塩を焼く煙なのであろうと 源氏は長い間思っていたが、 それは山荘の後ろの山で柴《しば》を燻《く》べている煙であった。 これを聞いた時の作、 山がつの 庵《いほり》に 焚《た》けるしば しばも言問ひ 来なむ恋ふる里人 冬になって雪の降り荒れる日に 灰色の空をながめな…