【源氏物語324 第12帖 須磨58】源氏は 王昭君《おうしょうくん》を歌った詩の句が口に上った。月光が明るくて、狭い家は奥の隅々まで顕わに見えた。

源氏は 「胡角一声霜後夢《こかくいっせいそうごのゆめ》」と 王昭君《おうしょうくん》を歌った詩の句が口に上った。 月光が明るくて、狭い家は奥の隅々《すみずみ》まで顕《あら》わに見えた。 深夜の空が縁側の上にあった。 もう落ちるのに近い月がすごいほど白いのを見て、 「唯是西行不左遷《ただこれにしへゆくさせ…