【源氏物語335 第12帖 須磨69】「これは形見だと思っていただきたい」宰相は大切な笛を源氏に贈る。友情がしばらく慰めたあとの源氏はまた寂しい人になった。

「これは形見だと思っていただきたい」 宰相も名高い品になっている笛を一つ置いて行った。 人目に立って問題になるようなことは 双方でしなかったのである。 上って来た日に帰りを急ぎ立てられる気がして、 宰相は顧みばかりしながら座を立って行くのを、 見送るために続いて立った源氏は悲しそうであった。 「いつまたお…