【源氏物語342 第13帖 明石4】「住吉の神、この付近の悪天候をお鎮めください。慈悲そのものであなたはいらっしゃるはずですから」と源氏は言って大願を立てた。

「私はどんな罪を前生で犯して こうした悲しい目に逢《あ》うのだろう。 親たちにも逢えず かわいい妻子の顔も見ずに死なねばならぬとは」 こんなふうに言って歎く者がある。 源氏は心を静めて、 自分にはこの寂しい海辺で 命を落とさねばならぬ罪業《ざいごう》はないわけであると 自信するのであるが、 ともかくも異常で…