【源氏物語347 第13帖 明石9】恋しい父帝のお顔が面影に見えて、自分を助けるために遠くからおいでになったのであろうと思うと、源氏は力がついてきた。

源氏は夢とは思われないで、 まだ名残《なごり》がそこらに漂っているように思われた。 空の雲が身にしむように動いてもいるのである。 長い間夢の中で見ることもできなかった恋しい父帝を しばらくだけではあったが明瞭に見ることのできた、 そのお顔が面影に見えて、 自分がこんなふうに不幸の底に落ちて、 生命《いのち…