【源氏物語351 第13帖 明石13】明石入道の申し入れを受け、例の四、五人だけが源氏を守って乗船した。清い涼しい風が吹いて来て、船は飛ぶように明石へ着いた。

「知るべのない所へ来まして、 いろいろな災厄にあっていましても、 京のほうからは見舞いを言い送ってくれる者もありませんから、 ただ大空の月日だけを 昔馴染《なじみ》のものと思ってながめているのですが、 今日船を私のために寄せてくだすってありがたく思います。 明石には私の隠栖《いんせい》に適した場所がある…