【源氏物語393 第13帖 明石55】明石の君と結ばれたのも前生の因縁であろう。娘に誠意のある約束をした源氏は朝にならぬうちに帰った。

源氏自身の内に たいした衝動も受けていないでこうなったことも、 前生の因縁であろうと思うと、 そのことで愛が湧《わ》いてくるように思われた。 源氏から見て近まさりのした恋と言ってよいのである。 平生は苦しくばかり思われる秋の長夜もすぐ明けていく気がした。 人に知らせたくないと思う心から、 誠意のある約束を…