【源氏物語397 第13帖 明石59】紫の上からの返事は無邪気な可憐なものであったが、うらなくも 思ひけるかな 契りしを 松より波は 越えじものぞ その歌から悔しさも感じられる。

「誓ひしことも」 (忘れじと誓ひしことをあやまたば三笠《みかさ》の山の神もことわれ) という歌のように私は信じています。 と書いて、また、 何事も、 しほしほと 先《ま》づぞ泣かるる かりそめの みるめは海人《あま》の すさびなれども と書き添えた手紙であった。 京の返事は無邪気な可憐《かれん》なものであった…