【源氏物語404 第13帖 明石66】明石の上は思い乱れていた。京から迎えにきたものも多く 侍臣も喜んでいた。明石入道だけは泣いてばかりいた。

女はもとより思い乱れていた。 もっともなことである。 思いがけぬ旅に 京は捨てても また帰る日のないことなどは 源氏の思わなかったことであった。 慰める所がそれにはあった。 今度は幸福な都へ帰るのであって、 この土地との縁はこれで終わると見ねばならないと思うと、 源氏は物哀れでならなかった。 侍臣たちにも幸…