【源氏物語411 第13帖 明石73】出立の朝、時間と人目を盗んで源氏は文を送る。明石の上からの返事が来た。手紙を眺めている源氏は ほろほろと涙をこぼしていた、

言うともなくこう言うのを、源氏は恨んで、 逢《あ》ふまでの かたみに契る 中の緒《を》の しらべはことに 変はらざらなん と言ったが、 なおこの琴の調子が狂わない間に必ず逢おうとも言いなだめていた。 信頼はしていても目の前の別れがただただ女には悲しいのである。 もっともなことと言わねばならない。 もう出立の…