【源氏物語488 第14帖 澪標62】斎宮の宮は、源氏に返事を書いた。おとなしい書風で応用で品のあるものであった。源氏は伊勢へお行きになった頃から、この方に興味を持っていたのである。

宮は返事を書きにくく思召したのであるが、 「われわれから御挨拶をいたしますのは失礼でございますから」 と女房たちがお責めするので、 灰色の紙の薫香《くんこう》のにおいを染ませた艶《えん》なのへ、 目だたぬような書き方にして、 消えがてに ふるぞ悲しき かきくらし わが身それとも 思ほえぬ世に とお書きになっ…